アスペルガー症候群と就職

①アスペルガー症候群とは

・・・先天的な脳の認知機能の障害である「発達障害」の一種で、いわゆる「三つ組みの障害」と言われるものに不具合を生じやすいのが特徴と言われています。

 

【三つ組みの障害とは・・・】

  • 「社会性の障害」

マナーやルールの理解、人との距離感、人の立場に立ってものを考えるといった事が困難で、対人関係を上手く作れない

  • 「コミュニケーションの障害」

他者との共感が乏しいゆえに会話が成立しなかったり、冗談や比喩が通じない、「それ」「これ」「あっち」などの曖昧な指示が理解できない

  • 「想像力の障害」

臨機応変な対応を苦手にしたり、特定のこだわりを強く持ったりするのを特徴とする。そのこだわりの強さゆえに自身の興味のある分野に関しては並外れた知識や集中力をみせることも。

 

②アスペルガー症候群とADHDや自閉症との違いとは

最近ではアスペルガー症候群や、高機能自閉症などを合わせて「自閉症スペクトラム」という名称に統一されてきています。「スペクトラム」とは連続体という意味で、この名称を用いることでこれらの障害に「境界線のないひとつながりの障害」という意味合いを持たせています。

 

つまり、「自閉症スペクトラム」という名称に統一したことでこれまで分けられていたアスペルガー症候群や、高機能自閉症などは「本質が同じで、連続している障害」であるという見方が主流になってきているという事です。

 

【ADHDとの違い】

また、ADHDは、不注意、多動性・衝動性を主な特徴とし、前述の「三つ組みの障害」を特徴とする自閉症スペクトラムとは同じ発達障害の一種であっても、それぞれ異なる障害として分類されていますが、両者は併発するケースもあります。

 

ADHDと自閉症スペクトラムが併発する場合、診断名は自閉症スペクトラムが優先されますが、その特徴の現れ方は十人十色。それによる得手・不得手や困りごともその人々ごとで違います。

 

【“診断名”ではなく“その人の個性”と捉え対応する】

つまり「ADHD」「アスペルガー」と、診断名を分けてはいるものの、それらが併存するケースもあったり、その障害の現れ方は人それぞれで大変複雑なものです。

 

ゆえに、当事者自身もその周囲の方々も、診断名から画一的に判断・対応するのではなく「障害からくる特徴」がその人その人それぞれが持つ「個性」と捉え、それのマイナス面だけで捉えるのではなく、その人の持つ能力の活かし方やサポートの必要な場面などをお互いに考えていくことが「障害からくる特徴」によって生きづらさを覚えないために最善の方法であると考えられています。

 

③アスペルガー症候群のある人と就職

「障害からくる特徴」によって「生きづらさ」を覚えないために、その特徴がその人の「個性」と捉え、その人の持つ能力の活かし方やサポートの必要な場面などを考えるというのは、アスペルガー症候群のある人が就職を考える際には、より綿密に行わなければならないでしょう。

 

なぜなら就職をするにあたっても職場環境や仕事内容、対人関係、障害理解などを考慮せずに就職を決めることは、学生時代などと比べてもより強く「生きづらさ」を覚える結果となるからです。

 

その証拠となるのが、昨今社会問題化している、いわゆる「大人の発達障害」とマスコミなどで言われているものです。要は学生時代までは普通に過ごせていたと思っていたのに、社会に出てから不適合感を覚えて、そこでアスペルガー症候群などの発達障害が発覚するというケースです。学生時代には「個人のくせ」くらいで済まされていたものも、社会人ともなると、自身の「社会人としての評価」は「会社の評価」にもつながっていくわけで気になる点は厳しく指摘されていくのは当然のことと言えます。

 

ただアスペルガー症候群の特徴である「三つ組みの障害」によって、不得意とされるものは現代社会において、いずれも重要度が高く(というよりできているのが社会人としての基礎・常識というレベルで認知されているものばかり)、それによって「職業人としての評価」の前に「社会人としての評価」を大きく下げてしまう事になりやすいのです。

 

それなのに、当事者自身ならびに周囲への障害理解が進まず、このままの状況が続けば周囲は当事者に「怠けている」「常識がない」などと誤解を生むことになりえますし、注意・叱責を与える機会が増えてしまいます。それに対し当事者は自身に何が足りないのか理解できぬまま、自信だけを損なってしまい、それがひどくなるとうつ病や適応障害といった精神障害を引き起こす事にもなりかねません。(ちなみに、注意・叱責を与える周囲も当事者の対応に疲れ切ってしまい、うつ病などの精神障害をきたしてしまうケースもありえます。これをカサンドラ症候群といいます)

 

発達障害の理解不足から精神障害などを発症してしまう事を二次障害といい、アスペルガー症候群などの発達障害の当事者が仕事をしていく上でこの二次障害を引き起こさないという視点はとても重要です。そのためにも自身に向いている仕事やできる仕事、サポートの必要な事の理解とそのための環境調節は必要不可欠なのです。

 

④アスペルガー症候群のある人に向く仕事・向かない仕事

自身に向いている仕事とは「できる仕事」であり「長続きする仕事」です。特にアスペルガー症候群では、特定のこだわりの強さゆえにそれがより顕著になると考えられます。

 

そのうえで、アスペルガー症候群のある人に向く仕事・向かない仕事とよく言われる職業を下記の表に示してみました。

向く仕事

・学者、研究職

・コンピュータープログラマー

・Webデザイナー、CGアニメーター

・事務、書類管理

・カメラマン 校正者

・エンジニア 技術職

 

向かない仕事

・接客業、営業職 教師

・スーパー、コンビニ店員(レジ打ち)

・料理人、ウェイター・ウェイトレス

・介護・看護職

・電話オペレーター

 

 

 

前述の通り、発達障害は脳の認知機能の偏りによるものでその偏り方はその人ごとによって千差万別です。上記の表はあくまでアスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムの特徴である「三つ組みの障害」を考慮したうえでの向く仕事・向かない仕事という意味であって、目安として参考にすべき程度のものと考えます。

 

アスペルガー症候群のあるなしに関係なく、その人に向く仕事・向かない仕事というのは、その人その人それぞれが持つ個性や能力の適切な把握とその活かし方の検討が必要で、そのうえで障害に対し、周囲から適切なサポートが得られるかどうかが、アスペルガー症候群のある人だけでなく、発達障害のある人すべてが対象となる、向く仕事の判断基準となっていくと思います。

 

アスペルガー症候群のある人が仕事選びで失敗しないためには、無い物ねだりをするよりも自身の持っている能力を最大限発揮できるようにすべきで、そのために自身の特性の理解や得手・不得手の把握はもちろん、その理解と必要なサポートを得られる環境の整備がなにより大切といえるでしょう。

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